フードダイバーシティとは?注目される理由や食品事業者の取り組みをまとめて紹介

公開日:2024.07.24 更新日:2024.10.17
ライター:ショクビズ編集部

日本においてもフードダイバーシティ(食の多様性)が重要視されるようになりました。
特に日本は外国人観光客が多いため、求められる食の種類も多種多様です。
しかし、フードダイバーシティをどのように推進していくのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、食品事業者向けにフードダイバーシティの特徴やメリット、企業の事例を紹介します。

フードダイバーシティとは

フードダイバーシティとは、「食の多様性」を意味する言葉です。

一般的には、世界の文化や宗教などによる多彩な食文化が存在することを意味します。その他にも、健康増進や医療などの制限に基づくものも該当する場合があります。
食品事業者におけるフードダイバーシティは、食の多様性を受け入れ、提供できるための環境を整えることです。例えば、ヴィーガン対応のメニューを導入するのもフードダイバーシティのひとつです。
近年、外国人観光客が増えていることから、フードダイバーシティの推進が重要視されています。

訪日外国人の増加により食の多様性が注目されている

フードダイバーシティが注目されるようになったのは、訪日外国人の増加にあります。

JTB総合研究所の調査によると、2024年4月の訪日外国人数は300万人。前年同月比と比べ56.1%も増加しています。
また外国人雇用が一般的になり、日本に住む人も増えてきました。
それに伴い、ヴィーガンハラルフードなど食の多様性が重要視され、フードダイバーシティの考え方が拡大しています。

食品事業者がフードダイバーシティを推進すれば、外国人の需要を取り込め、大きな売上アップにつながるかもしれません。

フードダイバーシティの3つの考え方

フードダイバーシティは大きく分けて3種類あります。

  1. アレルギーなど「食べられないもの」 
  1. 宗教など「食べてはいけないもの」 
  1. ヴィーガンなど「食べたくないもの」

 
それぞれについて詳しく解説します。

アレルギーなど「食べられないもの」

食物アレルギーなど、「食べられないもの」への対応もフードダイバーシティに該当します。

食物アレルギーとは、特定の食品を口にしたり触れたりした時に起こるアレルギー反応です。個人差はありますが、命に関わる場合も多く、厳重に取り扱わなければなりません。
食品のアレルギー表示は、食品表示基準義務7品目と食品表示基準推奨21品目に分類されています。


出典:
食品表示.com 食品のアレルギー表示・方法について 
食品メーカーだけでなく、外食産業においてもアレルギー表示には注意しましょう。

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宗教など「食べてはいけないもの」

宗教上の理由「食べてはいけないもの」への対応も重要視されています。

特にさまざまな宗教を持つ訪日外国人は、食べてはいけないものがたくさんあります。
例えば、ハラルは「豚肉」と「アルコール」が禁止です。しかも豚肉と一緒に保管されていた食材や、豚肉を食べて育った動物も該当します。
そのため、豚肉を使わないだけではハラルフードとは呼べません。最悪の場合、トラブルに発展する可能性があるため、十分な注意が必要です。 


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ヴィーガンなど「食べたくないもの」

ヴィーガンやベジタリアンなど、個人の考え方によって「食べたくないもの」は、フードダイバーシティで特に注目されています。

ヴィーガン動物性の食品を一切口にしない「完全菜食主義者
ベジタリアン
肉や魚介類などの動物性食品を一切食べず、植物性食品を中心に食べる人

最近は、日本人のヴィーガンも増えています。それにより、ヴィーガンに対応したメニューを揃える飲食店も増加してきました。アレルギーや宗教よりもライトな反面、求める内容も人それぞれです。大きな問題を引き起こす可能性は低いですが、お客様に合わせた対応が求められるでしょう。 

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食品事業者がフードダイバーシティに対応するメリット3 

食品事業者がフードダイバーシティに対応するメリットは以下の通りです。

  1. インバウンドの需要を取り込める 
  1. 飲食店は団体の獲得につながる 
  1. グローバル人材の確保につながる 


それぞれについて、詳しく解説していきます。

インバウンドの需要を取り込める

訪日外国人(インバウンド)には、ヴィーガンやベジタリアンがたくさんいます。

実際に、ヴィーガンやベジタリアンの人口は世界で6億人。ハラルフードが必要なムスリムは、東南アジアの人口の半分を占めています。これらの需要を獲得できれば、大きな売上を見込めるはずです。
全てに対応するのは難しいですが、ヴィーガン対応のメニューを開発したり、ベジタリアンが好むお店づくりをしたりなど、少しずつ広げていくのがおすすめです。

飲食店は団体客の獲得につながる

飲食店がフードダイバーシティに対応すると、団体客の獲得につながります。

例えば、団体客の中にヴィーガンが数人いると、その団体は「全員同じものを注文しても問題ない飲食店を選びたい」と思うはずです。特にヴィーガンやムスリムが混じっている団体だと、トラブルを防ぐために、フードダイバーシティに対応したお店を優先して選びます。
フードダイバーシティに対応すれば、訪日外国人の団体客の獲得につながり、大きな利益を狙えるでしょう。 

グローバル人材の確保につながる

日本では、訪日外国人だけでなく在日外国人も増えています。

特に大企業では外国人の人材確保に努めており、グローバルな環境が当たり前になってきました。
例えば、社員食堂がヴィーガンやムスリムに対応していたらどうでしょうか?
対象の外国人は、働きやすい環境が整っていると感じてくれるはずです。その結果、優秀な人材確保ができ、会社の成長につながります。

フードダイバーシティの取り組み事例

食品事業者のフードダイバーシティの取り組み事例を紹介します。

ハラール・ヴィーガン対応の「味噌煮込みうどん店大久手山本屋」

■引用元:味噌煮込みうどん店大久手山本屋HP(https://a-yamamotoya.co.jp/kodawari.html

名古屋に本店を置く味噌煮込みうどん店大久手山本屋では、フードダイバーシティへ対応し、着実に売上を伸ばしています。

同店では、ヴィーガンとムスリムに対応した料理を提供。
ムスリムに関してはハラル認証の取得が難しかったため「ムスリムフレンドリー」を公言し、最大限の配慮をしています。

例えば、お店の看板商品である味噌煮込みうどんをヴィーガン対応にする際、出汁をカツオからキノコに変えて何度も試行錯誤したそうです。このように、外国人に美味しいと思ってもらえるメニュー開発も大切です。

地域全体で食の多様化に挑戦する「岩手県二戸市」

■引用元:岩手県二戸市HP(https://www.city.ninohe.lg.jp/info/1867

岩手県二戸市では、地域全体でフードダイバーシティを推進しています。

2020年には、市内事業者の小松製菓、南部美人、久慈ファームと連携し「フードダイバーシティ(食の多様性)宣言」を行いました。
例えば、二戸市の名物であるりんごやアスパラガスをシンプルな調理法で提供し、ヴィーガンやムスリムの人でも安心して食べられる飲食店を増やしています。今後も、市内の飲食店や食品メーカーと連携し、フードダイバーシティを広めていくようです。

多彩な商品を開発する「尾西食品」

■引用元:尾西食品株式会社HP(https://www.onisifoods.co.jp/csr/

アルファ米で日本シェアNo.1を誇っている尾西食品では、フードダイバーシティを推進しています。 

  • おいしいアレルギー対応製品 
  • ハラール認証取得製品 
  • 宇宙日本食認証の取得 


このように、世界規模で商品開発を行っているのが特徴です。

例えばアレルギー対応製品は、完全に隔離された専用の作業場を使用し、アレルギー表示28品目不使用で製造されています。
特に日本は災害が多い国なので、アレルギー対応の食品を常備しておくと安心です。
このように、国内外のフードダイバーシティに対応し、今後も成長が期待される企業です。 

ハラール認証を取得した蕎麦屋「そじ坊」

■引用元:株式会社グルメ杵屋レストランHP(https://www.gourmet-kineya.co.jp/kodawari/

株式会社グルメ杵屋が運営している蕎麦屋「そじ坊」は、ハラール認証を受けた店舗を拡大しています。

お店の魅力は、信州の民家を彷彿とさせる店内と、お客様自身で生わさびをすりおろして蕎麦を食べられるところです。
そじ坊では、通常商品に加えて、ハラール認証を受けた御前セットを用意。ハラールカレーをはじめ、一度に天ぷらや蕎麦などを楽しめるセットを開発しました。同店では「日本のソウルフードで世界の人々を幸せにする」という目標を掲げているため、今後もハラール認証の店舗を増やしていく予定です。

ノンアレルゲンに特化した健康食品メーカー「辻安全食品」

■引用元:辻安全食品株式会社HP(https://tsuji-a.com/products/

辻安全食品株式会社は、国内初のノンアレルゲンに特化した食品メーカーです。

同社では、アレルゲンフリーの調味料やお菓子、加工食品、などを開発しています。小麦を使わないパンや乳製品を使わないチョコレート、大豆や小麦を使わない醤油など、アレルギーの人でも安心して食べられる商品作りが強みです。
アレルギー原材料を持ち込まない専用の工場を保有しているため、高い安全性を誇っています。
ノンアレルゲンに特化することで差別化し、フードダイバーシティの推進に努めている事例です。

食の多様化に敏感な企業を目指そう

今回はフードダイバーシティについて解説してきました。
訪日外国人が増えるとともに、フードダイバーシティの重要性が高まっています。
今後は多くの食品事業者がフードダイバーシティを推進していくでしょう。

ぜひフードダイバーシティへの理解を深め、商品開発の参考にしてみてください。 

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