【連載第31回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(11) | ショクビズ!

【連載第31回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(11)

公開日:2023.10.24 更新日:2024.09.03
ライター:ショクビズ編集部

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回も『商品を育てる』という点で、特に『小売り側の意識』について解説してみたいと思います。


小売業にとって、自店舗のお客様のニーズに合わせた品ぞろえを行うということは、売り上げ確保の観点からも最も重要な行為とされています。店舗に来店されるお客様のニーズは、無論お店ごとに大きく異なり、Aというお店での売れ筋商品がBのお店では全く売れず、Bのお店での売れ筋商品がAのお店では全く人気がないということは、頻繁に起こります。

これらいついては、決して「チェーンの平均値で見ない」ということが重要となります。ややもすると、『A店で売れているのだから、Bでも売れるだろう。Bの店は売場・売り方がおかしいのではないか?!』というようなことが頻繁に論じられるケースがありますが、決してそのようなことばかりではなく、お店に来店されておられるお客様のニーズによって、お店の売れ筋商品は大きく異なります。それだからこそ、お店ごとに「ニーズに合う商品」を「育成(育てる)」事が重要となるのです。

しかし、残念ながら、現下の人手不足、労働力不足によって、そこまで細かく見お店に来店されるお客様の動向を確認し、商品を育成出来ているという店舗はそう多くはありません。ましてや、これだけ商品が次々と発売され、季節ごとに大きく商品の構成や棚割りを変えなければならない実態から考えると、『商品を育てる』ということが如何に難しい状況か、ご理解いただけるのではないかと思います。

が、他と同じ動きや、チェーンとしての平均的な動きに終始してしまうと、結果的にはお店の優位性(魅力)が全くなくなり、「何を買いに来ればよいのか?」分からない中途半端なお店となり果ててしまいます。現下では、『魅力のない(何を買えばよいか分からない)お店』がかなりの数、増加してきており、特にスーパーなどについては、ドラッグストアやコンビニにその座を追われてきており、スーパーとしての『商品育成の矜持』がどこにあるのか?明確に打ち出さねば、これから先の店舗の存在意義そのものが失われる可能性が高くなります。その意味では、メーカーさんに期待することとして、商品の情報発信の際には、『誰に』『どんな場面で』『どの様な時に』『どの様にして』利用すれば、自社の商品が最も輝くのか?という点についての情報発信を積極的に実施頂きたいと切に願うばかりです。

本来ですと、小売り側が商品を自店に導入する時には、綿密に商品の設計を確認し、自店舗の「どなた」に向けて『どの様な情報発信』を行うか?を綿密に分析・調査することが求められますが、現状ではそこまでの手は回っていないのが実情で、何としかして売場を作り上げるというのが現在の状況かと思います。その意味では、メーカーさん、卸さんからの情報は、小売業にとってみれば宝物にも匹敵する程の価値があるものとなっています。是非とも、積極的な情報発信をお願いしたいところです。

しかし、ご注意頂きたい点があります。それは、情報は決して「製法」や「原材料」に偏らないでいただきたいと思います。メーカーさんからすれば、こだわりのある原材料で独自の製法という点で積極的にアピールをなされたいところでしょうが、実はお客様は底の部分については余りこだわりをお持ちではありません。むしろ、余りにこだわりのある原材料や製法ですと、引いてしまう部分もあります。

お客様が最も求めていらっしゃるのは、『どう食べれば(使えば)自分の生活が豊かになるか?(美味しく食べられるか?)』という点だけです。そのことを踏まえて、メーカーさんとして、小売業或いはお客様向けの情報発信をお願いしたいと思います。

次回も、『商品を育てる』と言う点で、特に『商品の育て方の具体例』という事について解説します。

【連載第30回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(10)

(次の配信は11月25日頃の予定です。)


<プロフィール>

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。

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