コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。
今回は、『エンドゴンドラでのストーリ展開』と言う点について、お店は何をしているのか?解説してみたいと思います。
お店では、エンドゴンドラつくりには、いつもかなり腐心をしています。季節ごと、催事ごと、イベントごと、それぞれにエンドゴンドラでの商品展開を実施し、少しでもお客様の目に留まり、商品を手に取っていただけるように対応する。これがエンドゴンドラつくりの基本的な考え方ですが、無暗に商品だけ並べるということではありません。そこには、「ストーリー」構築が求められます。
「ストーリー」とは、季節的な商品群であれ、催事であれ、イベントであれ、それらで必要とされるであろう商品を分類、分野を超えて展開させる事が重要となります。例えば、季節催事に於いてで言えば、「冷たい麵」のエンドゴンドラに必要なものとしては、特段特別な商品が必要な訳ではありません。エンドゴンドラで陳列されるこれらの商品は、原則的に新商品や限定商品などの商品以外は、各部門ごとに展開がされている商品が一同に集められて展開をすることになっています。通常(定番)の売場との「ダブル展開」がなされているケースが非常に多い状況です。
その際、必要とされる内容としては、『可能な限りエンドゴンドラの商品だけでメニューが作れる事』であると言えます。例えば、冷たい麺の中で、「ざるそば」を作ろうとすれば、乾麺のそば、もみのり、めんつゆ、チューブのショウガ、同じくチューブのわさび、一味、七味、もみじおろしなど、想定される商品を一カ所に取り纏めて陳列を行う。これが、エンドゴンドラの基本的な作成の考え方です。
しかし、複数の店舗を展開しているチェーン店などでは、エンドゴンドラについてだけは、各店舗での自由な発想での展開を許可しているケースが多いのが現実です。定番での売り場展開は、皆さんもご存じの通り「チェーン統一の棚割り表」で、ある意味で「縛られている」状況ですが、エンドゴンドラだけは各店舗での自由は裁量で決定できる環境となっているケースが多い状況です。それだけに、店舗では、自店の客層や利用のされ方から考えた商品構成で催事などのエンドゴンドラを作成することが多い状況です。チェーン本部からのアドバイスもあるにはありますが、一般的な売場の考え方だけでエンドゴンドラを作成してしまうと、個店ごとのお客様に響くことは少なくなってしまいます。それだけに、「冷たい麺」というテーマでのエンドゴンドラ作成においては、各個店での商品展開を自店舗で行うことになります。ストーリーをどう作るか?お店の技術の見せどころでもあります。
家庭での家族人員、年齢構成等、商圏内の住民(お客様)の嗜好の傾向、所得の多寡、平日中心の購入か休日中心の購入か?など、お店に来店されるお客様の購買行動から、「ストーリー」を構築し、その上で商品を合わせていくことになります。スーパーなどで売られている商品は、その多くが年毎などの流行などに左右されることなく、年間を通じておよそ同じものが同じタイミングで購入されることになります。それだけに、自店商圏の周りの変化に対して、年ごとの商品構成を見直し続け、長期予報などによる気温の上下予測なども加味して、展開の強弱をつけていく事になります。
「ストーリー」の作り方については、次号以降、更に様々なケースの解説を加えていきたいと思います。
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この記事のライター
信田 洋二
1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。