アレルギー対応食品の市場が伸びている!企業の取り組み注意すべきポイントをご紹介

公開日:2023.04.24 更新日:2024.09.11
ライター:ショクビズ編集部

食物アレルギーがある人は、特定の食品を食べることができません。そんな時に活躍するのがアレルギー対応食品です。
日本の食物アレルギー患者は増加傾向にあり、今後はアレルギー対応食品の市場が伸びると予想されています。
そこで今回は、アレルギー対応食品を製造するときの注意点や取り組んでいる食品メーカーの事例をご紹介します。

食物アレルギーとは

食物アレルギーとは、特定の食品を食べたり触れたりした時に、過敏な反応を起こすアレルギー反応です。個人差はありますが、呼吸困難や血圧低下、意識消失など重篤な状態に陥ることのある危険な疾患です。

食品のアレルギー表示においては、食品表示基準義務7品目食品表示基準推奨21品目に分類されています。

食品表示基準
義務7品目
えび・かに・小麦・たまご・そば・乳・落花生

えび かに 小麦 たまご そば 乳 落花生
食品表示基準
推奨21品目
あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キュウイフルーツ・牛肉・くるみ・ごま・さけ・さば・大豆・豚肉・バナナ・鶏肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン・アーモンド

出典:食品表示.com 食品のアレルギー表示・方法について

食物アレルギーの原因となるアレルゲンの主な成分はタンパク質で、「卵」「牛乳」「小麦」「えび」「かに」などの食品が該当します。

食物アレルギーは、乳幼児だと全体の1%~10%、学童期以降では1~3%まで減少。そして大人になるとアレルギーが改善し、ほとんどの食品を食べられるようになります。

しかし大人の食物アレルギーは改善が難しく、原因となる食品を取り除くした対処法がありません。そのためアレルギー対応食品の開発が進んでいるのです。

食物アレルギーの患者は増えている

日本の食物アレルギーの患者数は年々増えています。その理由は、食物アレルギーへの関心が高まり、医療の診断技術も向上したからだと考えられています。

消費者庁の調査によると、食物アレルギーの原因物質は鶏卵が33.4%と最も多く、牛乳、木の実類、小麦と続いています。

0歳(1,876)1-2歳(1,435)3-6歳(1,525)7-17歳(906)≧18歳(338)
1鶏卵 60.6%鶏卵 36.3%木の実類 27.8%牛乳 16.9%小麦 22.5%
2牛乳 24.8%牛乳 17.6%牛乳 16.0%木の実類 16.8%甲殻類 16.9%
3小麦 10.8%木の実類 15.4%鶏卵 14.7%鶏卵 14.5%果実類 9.8%
4魚卵 8.2%落花生 12.0%甲殻類 10.2%魚類 7.7%
5落花生 6.6%魚卵 10.3%落花生 9.1%木の実類 5.9%
6小麦 5.8%小麦 6.7%果実類 7.8%牛乳 5.0%
7小麦 7.6%
小計96.2%89.8%87.5%82.8%67.8%

出典:消費者庁 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書

さらに各年齢別に食物アレルギーの原因を見ると、18歳以上は小麦や甲殻類、果実類が多く、子どもの鶏卵や牛乳等のアレルギーは改善したと考えられます。多くは加齢とともに改善すると言われていますが、大人になり他の食物アレルギーを発症するケースも少なくありません。

食品を製造する時に気を付けるべきポイント

食品製造の現場では、食物アレルギーに配慮した取り組みが必要です。そこで食品を製造する時に気を付けるべきポイントをまとめてみました。

食品表示にはアレルゲン表示が義務付けられている

食物アレルギー対策として、容器包装された加工食品にはアレルゲン表示が義務付けられています。

アレルゲン表示には「個別表示」と「一括表記」の2種類。原則は「個別表示」ですが、表示面積が狭い場合は、原材料名の最後に「(一部に○○を含む)」と表示する形でも問題ありません。

個別表記
  • 表示は個別表示を原則とします。
  • 乳を含んでいる場合→「乳成分を含む」と表記します(統一)
  • 複数の特定原材料がある場合は「●●・△△」とナカグロでつなぎます。
  • 繰り返しになる特定原材料を省略可
  • 添加物は「~由来」と表示します。
一般表記
(一括表示)
  • 表示面積に限りがある場合、例外的に可能となります。
  • 原材料や代替表記も含まれる特定原材料について、原材料名欄の最後に「(一部に●●・■■・△△を含む)」と表示する。

出典:食品表示.com 食品のアレルギー表示・方法について

また最近は、老若男女、さらには国籍の違う人でも分かりやすいように、イラスト付きの表示も推奨されています。

製造現場で原材料の取り扱いに注意する

原材料を受け入れる際は、製造現場に入れる前に原材料表示を確認し、アレルゲン食品とそうでない食品を分けることが大切です。

一緒に搬入すると食品同士が触れ合い、知らず知らずのうちにアレルゲン物質が付着してしまうからです。特に小麦やそば粉などの粉物は、空気中に飛散しやすいので注意しましょう。

アレルゲン食品は、密閉容器に入れて保管することが推奨されています。その上でタグ表示や色での識別を行い、他の食品との接触を避けることが大切です。

アレルゲン食品と接触させないよう製造を工夫

食品製造時は、アレルゲン食品とそうでない食品の接触が起こりやすいシーンです。製造の流れを確認しながら、接触しないように対策をしましょう。

アレルゲンを含む、含まないをラインで区別したり、製造者のキャップの色を変えたりなど、すぐに判別できるように工夫するのがおすすめ。またラインがひとつしかない場合は、先にアレルゲンを含まない食品を製造し、その後にアレルゲンを含む食品を作ると、トラブルが発生しにくくなります。

洗浄を徹底し、残留ATP測定などの機器を活用

アレルゲンを含む製造現場では洗浄を徹底しましょう。アレルゲンは加熱や消毒では除去できないため、洗浄して落とさなければなりません。ラインや製造機器だけでなく、床や壁の洗浄も必須です。

しかし本当にアレルゲンが付着しているか目視では確認できません。そんな時は、アレルゲンを測定できる残留ATP測定などの機器を活用しましょう。

アレルゲンが残っていると、会社の信用を失う事態になりかねません。ぜひ洗浄を徹底して、アレルゲンを残さないようにしてください。

アレルギー対応に取り組んでいる食品メーカーの事例

アレルギー対応に取り組んでいる食品メーカーの事例をご紹介します。
ノンアレルゲンの食品の開発のほか、アレルギー表示や製造現場での工夫など参考にされてみてください。

食物アレルギー協同取り組み「プロジェクトA」

食物アレルギー協同取り組み「プロジェクトA」

■画像引用元:食物アレルギー協同取り組み プロジェクトA – オタフクソース(https://www.otafuku.co.jp/product/otafuku_allergy/pja/

食物アレルギーに配慮した商品を開発する食品メーカーが協同し、食物アレルギーへの取り組みを強化する「プロジェクトA」が発足されました。

参加企業である「オタフクソース」「ケンミン食品」「永谷園」「ニッポンハム」「ハウス食品」「食物アレルギーの有無にかかわらず、みんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現」に貢献することを理念に、食物アレルギーに配慮した食品の普及やレシピ開発、発信発動に取り組んでいます。

例えば、ニッポンハムグループでは、ハムやソーセージのつなぎとして乳成分や卵白を使用してきました。そこで、それらのアレルゲン物質を使用しない製品の開発に着手し、商品化にもこぎつけています。

このように食物アレルギーに関する取り組みは注目されやすく、商品開発の後押しとなるでしょう。

ノンアレルゲンに特化した健康食品メーカー|辻安全食品株式会社

辻安全食品株式会社

■画像引用元:辻安全食品について – 食物アレルギー対応食品の「辻安全食品オンラインショップ」(https://www.allergy-food.jp/?tid=3&mode=f4

辻安全食品株式会社は、国内初のノンアレルゲンに特化した健康食品メーカーです。同社では、小麦を使わないパンやクッキー、乳製品を使わないチョコレート、大豆や小麦を使わない醤油など、さまざまなノンアレルゲン食品を開発しています。

中でもノンアレルゲン調味料は多くの人から重宝されています。一般的な調味料は、多くのアレルゲン物質が含まれており、食物アレルギーを持つ人は使用できないのが現状でした。しかし辻安全食品株式会社では、ノンアレルゲンの醤油、めんつゆ、ソース、ケチャップなど多くの調味料をラインナップしています。

ノンアレルゲンに特化し、多くの需要を巻き取っている事例として参考になります。

食品表示と製造現場を工夫|アルファー食品株式会社

アルファー食品株式会社

■画像引用元:食物アレルギーへの取り組み|アルファー食品株式会社(https://www.alpha-come.co.jp/safety/allergy.php

お米を使用した商品開発や製造を行っているアルファー食品株式会社。アルファ化米の防災用非常食をメインに、お米のパイオニアメーカーとして業界を牽引しています。

同社では、食品表示基準義務7品目と食品表示基準推奨21品目の全てのアレルギー表示を実施。製造現場では、衛生区分を設置し、アレルゲンを含む食品とそうでない食品を明確に分け、接触を予防しています。

さらに食品表示基準義務7品目については、自主検査を実施する徹底ぶり。多くの人が食べるお米だからこそ、アレルゲン食品には細心の注意を払っています。

ノンアレルゲンの商品開発のほか、食品表示のアレルギー表示にも最新注意を

今回は食物アレルギーや企業の取り組みについて解説してきました。ノンアレルゲンの食品を開発しなくとも、アレルギーの表示には細心の注意を払わなければなりません。

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