【連載第21回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(1) | ショクビズ!

【連載第21回】価格暴騰で消費者がどの様な対応を取るのか?(1)

公開日:2022.12.19 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブン-イレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

今回から数回は、緊急掲載として、『史上まれにみる物価高』に消費者はどの様に対応しようとしているのか?という点について解説します。


今回も、緊急掲載として、『史上まれにみる物価高』に消費者はどの様に対応しようとしているのか?という点について解説をしたいと思います。

「価格の暴騰」について言えば、2022年秋に市場最大と言われる規模の商品の一斉値上げがあってもなお、直ちに「再値上げ」「再々値上げ」を予定しているメーカーさんも多くいらっしゃいます。世界中の誰しもがこの状況を歓迎してはいませんが、一向に収まる気配はなく、むしろ、ウクライナ戦争が長期化するにつれ、エネルギーコストについての上昇リスクが高まり、その事が引き金となって、更に様々なモノの値段が上がろうとしています。ハイパーインフレとまではいかずとも、インフレの波は確実に迫ってきており、古くは1973年に勃発した「オイルショック」に端を発した長期間の景気減速、狂乱物価とまで言われた時代の物価水準など、往時がよみがえるような動きになろうとしています。

さて、その様な中、消費者はどの様に自らの生活を守ろうとしているのか?スーパーなど、現場で起こっている事を解説してみたいと思います。

スーパー等に買い物に来られるお客様の内、およそ7割~8割ほどのお客様は、その日の献立などを決めずに買い物に来られるケースが非常に多い状況です。中には、他に余計なものを買わないようにするため、しっかりと「買い物リスト」を記入し、お店では脇目もふらずに目的の品物だけを購入し、一目散に帰宅される。と言う方もおられますが、これらのお客様は、夕方に仕事帰りに買い物をされる方に特に多く、その多くは、保育所や幼稚園などに子供を預け、迎えに行った子供の手を引いて買い物をされるお母さん世代の方が多いという特徴がありますが、それら以外の特に午前中に買い物に来られるケースの多い高齢者等については、その日の売場や商品の状況を見ながら買い物をされるというケースが多くなっています。

それらのお客様は、チラシの日替わり特売品などを予めご覧になっている場合が多く、特定の商品を購入する目的で店に買い物に来られ、その特売品を基軸に他の商材を組み合わせて、献立を決められる場合が多い状況です。これまでの消費動向では、旬の食材や買い合わせなどで献立を決めていく場合が多い状況でしたが、現状では「より安く」「よりボリューム感があるもの」が特によく買われる傾向が強くなっています。

スーパーなどでは、大半のお店でメインの入口に近いところに野菜の売場を設定している店舗が圧倒的ですが、野菜の内でも、特に「旬で安いもの」や「もやし、豆苗」と言った価格が安定していて、しかも嵩増しなどが容易にできるものと、他の野菜などを合わせて購入することで、量の確保をしつつ、全体の購入金額は抑えるというような購入のされ方が多くなってきています。

野菜の次に購入されることが多い『日配品』などでは、豆腐や納豆、漬物と言った定番中の定番の商材などでも、これまでよりも1ランク価格の低い商材の方が販売量が多くなっており、自らがこだわっている商品(納豆であれば、小粒の豆か、ひき割り納豆か、国産の大豆使用か…など)を特に決めていない場合などでは、特にこの傾向が強く出る様になり始めています。このように、まずは「全体の食事ボリュームの量は減らさずにコストを如何に下げるか?」と言う点で生活防衛の第一次対策を取っているケースが多くなってきています。

次回は、肉や魚と言った生鮮食品で変わり始めた消費行動について解説してみます。

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。