食品ロスを削減!SDGsとエシカル消費にもつながるアップサイクル食品とは
目次
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)が浸透するにつれて、最近耳にするようになった「アップサイクル」。もともと廃棄される予定だったモノを捨てずに、新しいモノ(商品)に作り替えて価値を高めることを指し、服やプラスチック製品などの商品を対象にした言葉でしたが、食品(フード)ロスや地球環境問題が深刻さを増す中で、食の分野でもムーブメントが巻き起こっています。
本記事では、アップサイクルの意味や食品ロス問題の現状、アイデアの詰まった日本のアップサイクル食品の事例をまとめました。環境問題改善だけでなくエシカル消費(社会や環境に配慮した消費)にもつながるアップサイクル。個人だけでなく社会全体の問題として、自分たちにもできることから始めてみませんか。食品業界、フードビジネスの分野で急浮上してきたアップサイクル食品とは?ぜひご一読ください。
SDGsにも貢献できるアップサイクルとは?
アップサイクル(英語表記:Upcycle)とは、役に立たなくなったなどの理由で廃棄される予定だったモノを捨てずに、新しいモノ(商品)に作り替え、価値を高めることです。
廃棄予定の不用品を再資源化し、新たな形に作り替えるリサイクル、そのままの形で誰かに譲って使ってもらうリユースとは違い、新しい付加価値を与え、より価値のあるモノに転換させるという点がポイントです。
例えば、廃タイヤでサンダルを作る、履けなくなったジーンズでバッグを作るなどが該当します。
ここで、環境配慮・廃棄物対策に関するキーワードをおさらいしてみましょう。
①リデュース:モノを大切に使い、ゴミを減らすこと(エコバックを持参するなど)
②リユース:形を変えずに、繰り返し使うこと(リサイクルショップの家電、家具など)
③リサイクル:製品を回収して資源の状態に戻し、新しく作り替える(ペットボトル、空き缶、紙類など)
④リメイク:古くなったり不要になったりしたモノに手を加えて再利用する(洋服、小物、映画など)
①~③の頭文字を取って「3R」と呼ばれ、循環型社会を目指すために昇順で取り組むことが求められています。
●豆知識●
アップサイクルとは逆の「ダウンサイクル」という言葉もあります。
元々の価値より低くはなるけれど、使用済みのモノで新たな使用価値を生み出すことを指します。
ダウンサイクルの例としては、着なくなったTシャツで雑巾を作る、プラスチックケースを溶かして道路の材料にするなどが挙げられます。布やプラスチックなどの素材を使用するサイクル(寿命)を延ばすことにはつながりますが、雑巾や道路の次はリサイクル不能なゴミになってしまうため、持続性のないダウンサイクルとされるようです。
廃棄物をゼロに近づけ、循環型社会の実現を目指す新しい概念の一つとして注目されているアップサイクルですが、この動きはフードビジネスの分野でも活発化しています。これが「食のアップサイクル」です。
アメリカ・コロラド州デンバーに本部を置く非営利団体アップサイクル食品協会は、アップサイクル食品について「本来は人間の食用にされなかった原材料を用い、検証可能なサプライチェーンで調達・生産され、環境に良い影響をもたらす食品」と定義し、2021年に認証制度プログラムを策定しました。
・アップサイクル食品協会(Upcycled Food Association)のホームページはこちら
https://www.upcycledfood.org/
アップサイクルの前に!日本の食品ロスの現状を確認
食品廃棄物は世界的な問題として度々メディアでも取り上げられていますが、国際連合食糧農業機関(FAO)によると、食品の廃棄やロスによる世界経済の損失額は年間9,400億ドル(約101兆円)を超えるとされています。
農林水産省が2020年に発行した「aff(あふ)2020年10月号」では、世界では食料生産量の1/3に当たる約13億トンものまだ食べられる食品が毎年廃棄され、日本でも1年間に約612万トン(2017年度推計値)が捨てられているそうです。
その内訳は、スーパーマーケット(食品スーパー)などの小売店での売れ残りや飲食店での食べ残しといった事業系食品ロスが約328万トン、家庭系食品ロスが約284万トンとなっており、毎日国民1人当たりお茶碗1杯分の食料を捨てている計算になるそうです。日本の自給率は約38%と半分以上を輸入に頼っており、途上国では約9人に1人が栄養不足という現状を考えると、食品ロス削減は社会全体で取り組まなければならない問題だとあらためて感じます。
■参考資料:農林水産省「aff(あふ)2020年10月号」。詳細はこちら
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/pdf/aff2010_02.pdf
新商品も続々登場!アップサイクル食品の事例をご紹介
社会や環境に配慮した消費=エシカル消費を希望する消費者も年々増えており、アメリカのある調査会社は昨年、「アップサイクル食品産業の規模は約5兆円超と推定され、年5%のベースで成長する」と予測しています。
日本でもSDGs貢献への活動が活発化し、より身近な「食」に関わる問題が周知されてきたことに伴い、製造過程で出る副産物や規格外の農作物、売れ残りや消費期限切れの食品などのいわゆる「もったいない」資源を再生した商品市場が盛り上がっています。
ここでは、最近話題になったアップサイクル食品の事例を3つご紹介します。
①オイシックス・ラ・大地 製造過程で出る野菜の茎や皮をチップスに
食品宅配サービスOisixを運営する「オイシックス・ラ・大地」は2021年7月、自社通販サイトで製造過程で出る廃棄食材を活用したチップス「ここも食べられるチップス ブロッコリーの茎」「同 だいこんの皮」の販売を開始しました。
新サービス「Upcycle by Oisix(アップサイクル・バイ・オイシックス)」の第1弾商品として開発・販売したもので、2か月強で累計販売数1万4,000個を突破。食品ロス削減量3.5トンを達成したと発表しました。9月30日には梅酒づくりの役割を終えた梅の果肉を活用した「梅シュトレン」と「梅ドライフルーツ」を発売。
今後もアップサイクル食品の開発を積極的に行い、品ぞろえを充実させたいとしています。
■参照:Upcycle by Oisix
https://upcyclebyoisix.jp/
②ミツカングループ SDGsで売上増!野菜を丸ごと使ったブランドを開発
食品メーカー「ミツカン」は2018年に10年先の未来を見据えた「ミツカン未来ビジョン宣言」を発表。
SDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」の取り組みの象徴として2019年に販売をスタートした新ブランド「ZENB(ゼンブ)」は、これまでは捨てていた植物の皮や芯・さやなども捨てずに使用することで、環境負荷や食品ロスの削減に貢献。素材本来のおいしさや栄養素を引き出すことに重点を置き、独自の技術で商品化に成功しています。
丸ごと野菜のペースト「ZENB PASTE(ゼンブペースト)」や、丸ごと野菜に雑穀・ナッツを加えたスティック「ZENB STICK(ゼンブスティック)」などがあり、2020年9月に発売した豆100%の乾麺「ZENB NOODLE(ゼンブヌードル)」は、一時欠品状態になったという人気商品です。こちらの商品も公式ECサイトを中心に販売しています。
■参照:ZENB(ゼンブ)
https://zenb.jp/
③日本丸天醤油 甘酒と規格外のフルーツを組み合わせたスイーツ
1795年創業の兵庫県の醤油メーカー「日本丸天醤油」は、淡口醤油を製造するのに欠かせない甘酒と、不揃いや傷があって出荷できない規格外のイチゴなどの果物を使用してジェラート「YASASHIKU Gelato(やさしく ジェラート)」を開発・販売しています。商品化には試行錯誤の連続だったようですが、農家の食品ロスと自社の製造過程で生じる副産物をアップサイクルしたジェラートは、完売次第終了という貴重さもあって「おいしくて体にも優しい」と人気を集めています。
■参照:YASASHIKU Gelato(やさしく ジェラート)
https://www.yasashiku-gelato.jp/
アップサイクル食品を活用してサスティナブルな毎日を
現在、アップサイクルは、使用済みストローを活用した水着や、コーヒーかすを活用したボディスクラブ、お米とリンゴを活用した除菌ウエットティッシュなど、モノからモノ、食品からモノへの転換も多く見られるようになっています。
アップサイクル食品は、より一層の循環型社会の実現を目指して、今後も続々と増えていくことが予想されます。
地球環境を守るためにも個人の意識をアップデートし、食品ロス削減につながる活動を始めてみてはいかがでしょうか。
この記事のライター
ショクビズ編集部
企業の主な実績
オリジナルシールの企画・作成 10,000社以上
オリジナル紙箱・化粧箱・パッケージの企画・作成 11,000製品以上