【連載第4回】コロナ前後で変わるお客様の消費動向③

公開日:2021.07.16 更新日:2024.10.17
ライター:信田 洋二

コンビニエンスストアの王者セブンイレブンで120店舗もの経営指導を実施し、担当地区の店舗合計年商を大幅に伸長させた経験を持つ信田洋二氏。本連載では、小売業のスペシャリストである信田氏に、消費動向やメーカーの目指すべき方向性などについて分かりやすく解説していただきます。

4回となる今回は、前回に引き続き「コロナ前後で変わるお客様の消費動向」についてのコラムです。


さて、今月はコロナ禍によって変わったお客様の消費動向として、「情報の出し方」について解説します。コロナ禍において、最も大きく変わった消費行動としては、「巣ごもり需要」だと思います。外出などの行動の自粛や人流の抑制等の施策によって、在宅の時間が長くなり、旅行などへ出掛けることもはばかられる状況が続いています。

ネットでの消費は、この一年でかなり大きく伸長していることは皆さんもご存じだと思いますが、リアル店舗においても、昨年(2020年)ほどではないものの、それでも一昨年と比較しても、かなり高い売上を維持し続けている小売り業も多くあります。特に、生鮮品を扱うスーパーのうち地区に根差した店舗は、全国展開をしている大型のGMS(総合スーパー)の一昨年と比較しても、かなり高い売上が維持できています。が、ここでこの勢いを止めてはいけません。

この売上の高い状態は、本当の意味で地場に根差したスーパーなどの実力ではなく、あくまでも自宅にいる時間が伸びたための一時的な盛り上がりとみることが妥当です。今後、特に地場に根差したスーパーが末永く反映していくために最も重要なこととしては、「お客様に使い方(食べ方)を提案し続ける」ということに尽きると思われます。

これまで、スーパーなどでは、「さあ~品揃えしました。どうぞお買い上げを」という陳列や展開が大半で、お客様自らがそれぞれの商品特性などを見極めた上で、独自の判断とセンスで商品を購入するのが大半でした。そのため小売り側で出す情報としては、「単品(商品ごと)」の情報はあっても、商品を組み合わせて全く新しいモノが生み出せるという情報は、ほぼない状況でした。

モノ(商品)が売れなくなってしまっている昨今、このままの情報の出し方を続けていても、決してお客様は新しい発見をされるところにまでは至らず、スーパーの陳列棚から、自らの「見知っている」商品を中心に購入されることが続くと思われます。

そこで、「商品情報の出し方」として最も有効的であると考えられるのが、「どのように使えば(食べれば)おいしいのか」、あるいは「手軽に新しい組み合わせとできる(なる)のか?」ということに主眼を置いた情報の出し方を、メーカーの垣根を越えてコラボレーションし、共に拡販を図る方策を模索されることを強くお勧めします。

メーカー1社だけが自らの商品のみ、こだわりの情報を伝えるという時代は過ぎ去ったと考え、自社の製品と他社のモノを組み合わせることで、相互に効果が生じるというような組み合わせの妙が、お客様に新しい発見と喜びを見出していただけることになるのではないかと思います。

TVでの通販を中心に成長を続けているジャパネットたかたですが、他の通販番組と何が違うのか意識されたことはありますか?同社の商品紹介の最も大きな特徴は、徹底して「使い込んだ上での使い方の紹介」にあります。単に安いだけとか、タレントが出てきて商品を持ち上げるというような商品紹介はせず、最初から最後まで「(便利な)使い方」に集中したトークが大きな特徴です。

この例を考えるとメーカーとして「出すべき情報」とは何か、もうお分かりいただけるのではないでしょうか。メーカー間のコラボなどを行おうとすると、そこには様々な大きな壁が立ちはだかってくるかと思いますが、これらを乗り越えてこそ、次なるステージが広がってくるのです。

次回は、もっと具体的な例を挙げて「情報の出し方」で売上が変わった例を解説したいと思います。

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この記事のライター

信田 洋二

信田 洋二

1995年株式会社セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗経営指導員(OFC)並びにディストリクトマネージャー(DM)として、千葉県成田市を中心とした成田地区、千葉市内などの店舗合計120店舗に対する経営指導を実施。成田地区のDM在任時、担当地区の店舗合計年商を約140億円から約155億円に伸長。千葉県下(9地区)にて最も売上の低い地区を、第4位の売上となるまでに伸長させるなどの実績を上げた。その後、情報システム部を経て物流部に在籍。2010年株式会社Believe-UPを創業、コンサルタントとして独立。主に小売業を対象に、店長、マネジャー、SV育成、データを活用しての売場づくり指導などで幅広く活躍している。著書に『セブン-イレブンの物流研究』(商業界、2013年)『セブンイレブンの発注力』(商業界、2015年)がある。